電気石類 tourmaline 
(Na,Ca)(Fe,Mn,Mg,Li,Al)3Al6(BO3)3(SiO3)6(OH,F)4
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六方晶系 一軸性(−) ω=1.635〜1.675 ε=1.610〜1.650 ω-ε=0.017〜0.035

形態:膨らんだ3角や6角の断面を示す柱状。丸みのある粒や針状集合体のこともある。不規則他形のこともあるが,自形〜半自形のことが多い。普通に岩石中に含まれるのは鉄電気石(schorl)〜苦土電気石(dravite)系である。結晶の伸び方向に対し直消光。

色・多色性:無色のほか,濃淡の褐色系・濃淡の青色系が多く,それらが累帯構造をなす場合も多い。有色のものは色の濃淡の多色性が非常に強い(※色の濃淡と伸長方向は,黒雲母や角閃石類とは逆)。多色性が強い角閃石類や黒雲母とは,多色性観察での色の濃淡の伸長方向・へき開の程度や方向・アイソジャイアーで区別できる。

消光角:柱状のものは直消光。

へき開:認められないこともあるが,時にc軸の伸び方向に直角(0 0 0 1)に不明瞭に認められる。

双晶:なし。

伸長:c軸方向に伸びていることが多く,伸長は負。

累帯構造:複雑な固溶体をなし,遷移元素であるMnやFeに富むものははっきりした褐色系や青色系の色で,それらの色の濃淡や色の違いで累帯構造がわかることがある(右画像は柱状結晶の横断面。3角〜6角形の灰青色結晶の周辺部が部分的に褐色部に取り巻かれている)。
なお,遷移元素に乏しいものは無色で,色による累帯構造は認められず,累帯構造の境での屈折率の違いが平行ニコル下で無色の線として見える程度(ステージ下の絞りを絞ると分かりやすい)。




産状

片麻岩・結晶片岩・ケイ長質岩類(花こう岩や流紋岩など)の副成分鉱物として見られることがある。なお,超苦鉄質岩〜苦鉄質岩(蛇紋岩・はんれい岩・玄武岩)や苦鉄質の結晶片岩(緑色片岩・角閃石片岩)が花こう岩による接触変成作用を受けた部分に局部的にできている場合もある。

通常の岩石以外では,鉱化作用のもとである花こう岩体近傍の気成〜高温の熱水鉱床にまとまって多産する場合がある。また,ペグマタイトからは種々の色の粗大な結晶が多く産し,Liに富むリチア電気石の透明なものは宝石資源になる。



片麻岩中の電気石(鉄電気石−苦土電気石) 
Tor:電気石,Bt:黒雲母,Qz:石英,Fs:長石類,Grp:石墨
片麻岩には電気石が副成分鉱物としてしばしば見られ,褐色系のものが多い。自形のほか,このような半自形の楕円形〜長楕円形の粒状(c軸方向に伸長)などで見られる。多色性は著しいものの,その濃淡の方位(色の濃淡と伸長方向)は黒雲母や角閃石類とは逆で,へき開は時に伸び方向(c軸)に直角方向に不明瞭に認められる程度。また,このように色の濃淡の累帯構造が顕著に認められることが少なくない。黒雲母より屈折率は高い。





接触変成作用を受けたはんれい岩中の電気石(鉄電気石−苦土電気石) 
Tor:電気石,Pg:金雲母,Sp:スピネル,Pl:斜長石
超苦鉄質岩〜苦鉄質岩(蛇紋岩・はんれい岩・玄武岩)が花こう岩による接触変成作用を受けると,花こう岩からのホウ素分で鉄〜苦土電気石が変成鉱物としてできることがある。上画像の電気石は青色系(平行ニコルで青⇔無色の多色性が著しい)だが,この産状では褐色系のものも多い。
なお,もとのはんれい岩の有色鉱物は金雲母・灰緑色微粒集合体のスピネル・緑色の角閃石などに変わり,斜長石は累帯構造が消失したり再結晶化するほか細かい斜灰れん石やぶどう石などに変化する。




熱水鉱床中の電気石 
Tor1・Tor2:電気石,屈折率が低い無色の粒間の充填物は石英
鉱化作用のもとである花こう岩体近傍の高温の気成〜熱水鉱床にはしばしば電気石がまとまって多産し,鉱脈中に見られる他,そのそばの岩石中に鉱染状をなす場合もある。この産状のものは青系が多く(時に無色や褐色のものもある,形態的にc軸方向にかなり伸長した長柱状,針〜繊維状のものが多い。石英・緑泥石・白雲母・リン灰石・蛍石黄銅鉱・錫鉱物・鉄重石などを伴う。鉄〜苦土電気石の場合もあるが,かなり酸性の鉱化流体でできる場合も多く,その場合,Na・Caが欠乏したfoitite組成に近いものである。
上画像ではTor1はc軸に垂直な観察方位なので青〜無色の多色性が著しく,Tor2はc軸(光軸)に沿った観察方位なので,多色性は見られない。